『手相の辞典』沢井民三

沢井民三『手相の辞典』

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「手相」と聞けば、多くの日本人が思い浮かべるのは、街角の易者が語る東洋流の神秘的な占術だろう。しかし、その旧態依然とした世界に敢然と「ノー」を突きつけ、手相を科学の領域へと引き上げようとする一冊がある。それが、沢井民三氏が七年の歳月を費やして完成させた、まさに「辞典」の名にふさわしい労作、本書『手相の辞典』である。


 

東洋流の神秘から、西欧流の科学へ

 

著者はまず、日本の手相界が中国伝来の古い相法に固執し、その進歩を妨げている現状を鋭く指摘する。そして、本書が依拠するのは、カンや経験則ではなく、明確な論理と体系を持つ**「西欧流の近代手相学」**であると高らかに宣言する。

それは、19世紀フランスのデパロールとダルペンチニーが科学の礎石を据えて以来、医学、解剖学、生理学といったあらゆる科学の光を浴びて発展してきた、知的な体系なのだ。本書は、その西欧の叡智を、日本の読者のために初めて網羅的かつ組織的に編纂した、画期的な試みなのである。


 

手と脳を繋ぐ、驚くべき科学的根拠

 

本書の圧倒的な説得力は、その背後にある科学的な論証にある。著者は、世界的大家キロの著作を引用し、手相が単なる迷信ではないことを、驚くべき事実をもって明らかにする。

  • 1853年、ドイツの生物解剖学者マイスネルが発見した、手のひらに存在する**「微粒子(マイクロパーティクル)」**。それは神経を通じて脳と直結し、健康や思想、興奮状態に応じて増減し、生命が絶えると同時に消滅するという。
  • 1874年、イギリスの偉大な生物学者チャールズ・ベルが、この微粒子と脳のあらゆる部分が、神経系を介して直接連結していることを論証。

これらの記述は、手のひらが単なる肉体の一部ではなく、脳の活動、すなわち私たちの思考や健康状態をリアルタイムに反映する、極めて精密な表示盤であることを示している。かつて嘲笑された指紋学が犯罪捜査の科学となったように、手相もまた、人間を理解するための正当な学問となりうるのだ。


 

「これで十分だ」と言える一冊を

 

「私たちは永い間、手相研究にはこれで十分だという、精緻なものを欲してきたのです」。著者のこの言葉に、本書執筆に込められた執念が凝縮されている。欧米の膨大な文献を渉猟し、東洋の原理とも比較対照し、取捨選択を重ねて体系化した本書は、これまでのどの手相書とも比較にならないほど精密であり、学究的であると著者は自負する。

もしあなたが、曖昧な占いに満足できず、より論理的で、より科学的な根拠に基づいた手相の真理を探求したいと願うなら、この一冊は、そのための唯一無二の答えとなるだろう。本書によって自分の手を丹念に観察すれば、あなたは驚嘆すべき真実と共に、自らの本質と進むべき道を、はっきりと悟得するに違いない。

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