『おや？手相の心理学』浅野八郎

浅野八郎『おや？手相の心理学』

今のあなたの心の状態を映し出す「心理テスト」と、まだ見ぬあなたの可能性を秘めた「手相」。もし、この二つの側面を組み合わせることで、より確実に自分の明日を知ることができるとしたら——。心理学者・浅野八郎氏による『おや？手相の心理学』は、この画期的な「運命心理分析法」を提唱し、手相を単なる占いから、21世紀の「新しい人間学」へと昇華させる、知的好奇心に満ちた一冊である。

今のあなたと、まだ見ぬ「もう一人のあなた」

本書の根幹をなすのは、人間が持つ二つの側面を同時に分析するという、ユニークなアプローチだ。

1. 心理テストが示す「今のあなた」：現在の心の傾向や、表に出ている性格を客観的に明らかにする。
2. 手相が示す「もう一つのあなた」：潜在的に持っている才能や、特殊な状況下で現れるかもしれない、まだ見ぬ性格を物語る。

著者は、この二つの情報を組み合わせることによって初めて、より信頼性の高い、心理学的な「運勢診断」が可能になると説く。それは、未来を一方的に予言されるのではなく、自分自身の多面性を深く理解し、将来どんな生き方をするのかを自ら予測していく、主体的な自己分析の試みなのである。

科学が注目する、手相の可能性

本書は、手相を非科学的な迷信として扱わない。むしろ、近年の欧米における科学的な手相研究の活発な動きを、その強力な論拠としている。

『ニューズ・ウィーク』誌で紹介された、医師による先天性心臓奇形の早期発見。イギリスの医学者グループによる、手相と身体の先天性異常に関する学術論文。そして、名古屋大学の研究グループなどが進める、コンピュータによる手相のパターン認識——。

著者は、これらの客観的な事実を提示することで、手相や人相による人間分析が、いずれビジネス（入社試験やチーム編成）や医療（新生児の病気の早期発見）など、無限の応用範囲を持つ「新しい人間学」へと発展することを予見する。

未来を予測するための、心理学的アプローチ

『おや？手相の心理学』は、運命を神秘的なものとしてではなく、心理学の延長線上にある、予測可能なものとして捉えようとする、知的な探求の書である。

自分の将来を知りたい、どんな職業が向いているのか、どんな相手と結ばれるべきか。そんな現代人が抱く切実な願いに、心理学と手相学を融合させるという、かつてないアプローチで応えてくれる。伝統的な占いに抵抗があった、合理的な思考を持つ人にこそ、手に取ってほしい一冊だ。これは、あなたの手のひらから始まる、未来への心理実験なのである。