平竹辰『手相の知識』
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哲学者カントは言った、「手は人間の外部の脳髄である」と。私たちの文明、文化、そして個人の才能は、すべてこの「手」から生み出されてきた。『手相の知識』は、この深遠な事実を原点とし、40年以上にわたる東洋・西洋の研究の末に、手相学を迷信の占いから「才能を発見するための顕微鏡」へと昇華させようと試みた、平竹辰氏による一大研究の書である。
帰納法に基づく「経験科学」としての手相学
ダーウィンの甥、ガルトン卿が単純な観察から指紋学を一大科学へと発展させたように、本書は手相学を、膨大な実例に基づく「帰納法」によって専門的な学問へと高めることを目指す。著者は、数百人もの実例を検証し、その驚くべき的確さを実証。本書は、その四十余年の研究成果を結集したものである。
その分析は、単なる運勢判断に留まらない。アルコール中毒や梅毒といった遺伝的傾向、性格異常、さらには母胎内にいた時の栄養状態や大病の痕跡までが、手のひらの筋や脂肪組織に不思議なほど正確に現れるという。これは、手相を生理学、心理学、遺伝学と結びつけ、客観的な事実として捉えようとする、真摯な科学的態度の表れである。
運命占いではない、「適所適才」を発見する道具
本書は、運命を決めつけるための予言書ではない。むしろ、そのような使い方は「大きな誤認である」と明確に警鐘を鳴らす。本書が提供するのは、自分に与えられた才能を客観的に観察し、自らの進路を決定するための「顕微鏡」なのだ。
細かな作業に適した手、大胆な決断に向いた手、組み立てることに長けた手——。手と道具の関係が、そのまま手と才能の関係に導かれるように、手のひらにはその人の「適所適才」のヒントが隠されている。本書を読み解くことは、自分でも気づかなかった可能性を発見し、人生の羅針盤を得ることに等しい。
手は運命を変える
さらに著者は、手相が固定されたものではなく、「信仰や心理的可能性によって変化しうる」とさえ信じている。これは、手相を単なる生まれつきの設計図としてではなく、自らの意志と生き方によって書き換え可能な、ダイナミックなものとして捉える視点である。
『手相の知識』は、単なる占いに飽き足らず、より深く、より科学的に自己を探求したいと願うすべての人に開かれた門である。この一冊によって己を知り、自己の進路を発見することこそ、著者が心から希求するところなのだ。これは、あなたの手のひらという最も身近なテキストから、あなた自身の壮大な物語を読み解くための、信頼に足る手引きとなるだろう。
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