『手相の書』キロ ゆきまる監訳

キロ『手相の書』

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もし近代西洋手相術の歴史を遡るなら、その源流には必ず一人の偉大な人物の名が浮かび上がる。それが、20世紀初頭に欧米社交界を席巻した伝説の預言者、キロ(Cheiro)である。彼の名を冠した『手相の書』(原題:Cheiro's Language of the Hand)は、単なる一冊の占い本ではない。現代に至る手相術の体系を確立し、世界中の手相家に影響を与え続ける、まさに「聖典(バイブル)」と呼ぶにふさわしい不朽のクラシックである。

 

占いを「科学」へと昇華させた体系的アプローチ

 

アイルランド出身のキロ(本名:ウィリアム・ジョン・ワーナー)は、若き日にインドで占星術や手相術の秘儀を学んだとされる。彼が西洋世界にもたらした功績は、それまで経験則や神秘主義の域を出なかった手相術に、論理的で体系的な骨格を与え、誰もが学べる「科学」へと昇華させたことにある。

『手相の書』の神髄は、その緻密でシステマティックな鑑定法にある。主要な線(生命線、頭脳線、感情線、運命線など)はもちろんのこと、各指の付け根にある「丘(Mounts)」の状態、指の形状、手の硬軟といったあらゆる要素を総合的に分析し、多角的な人物像を浮かび上がらせる。

特に、それぞれの丘を惑星(木星、土星、太陽、水星、火星、金星、月)と結びつけ、その発達具合からその人の才能やエネルギーの方向性を読み解く手法は、彼が確立したものだ。これにより、手のひらは単なる線の集合体から、個人の内なる宇宙を映し出す小宇宙へと変わる。

 

マーク・トウェインの死を予言した男の叡智

 

キロの名声を不動のものにしたのは、その驚異的な的中率と、彼が鑑定した顧客リストの華やかさである。イギリス国王エドワード7世、サラ・ベルナール、オスカー・ワイルド、そして文豪マーク・トウェイン。彼は数々の著名人の運命を鑑定し、時にはその死期さえも正確に予言したと伝えられている。

本書には、そうした彼の豊富な鑑定事例が随所に散りばめられており、単なる理論の解説に留まらない、生々しい説得力をもって読者に迫る。一つひとつの線の意味、丘の解釈が、実際の人生においてどのように現れるのか。その膨大な実例の積み重ねこそが、キロの手相術が単なる空論ではない「経験科学」であることを証明している。

 

すべての手相学習者が還るべき場所

 

『手相の書』は、手軽に楽しめる入門書とは趣が異なる。その格調高い文体と、詳細を極めた内容には、手相という学問への真摯な探求心が求められる。しかし、手相術を本格的に学びたいと願う者にとって、本書は避けては通れない、そして何度でも立ち還るべき原点となるだろう。

現代に出版されている多くの手相術の解説書も、そのルーツを辿れば、多くがキロのこの体系に行き着く。流行り廃りのない、手相学の根幹を成す本質的な知識を学びたいのであれば、この伝説の預言者が遺した叡智に直接触れる以上の近道はない。100年以上の時を超え、今なお色褪せることのない洞察力に満ちたこの一冊は、あなたの手のひらを見る目を永遠に変えてしまう力を持っている。

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