『手相と漢方』
Amazon | 単行本 | Kindle |
Audible | 新着タイトル | |
Kindle | 新着タイトル |
幾嶋泰郎氏による『手相と漢方』は、長年手相を鑑定してきた私にとっても、その深い洞察に満ちた一冊でした。手相が単なる占いを超え、個人の心身の状態を映し出す鏡であるという観点から、漢方治療との融合を試みるそのアプローチは、まさに手相家が追求すべき「人間全体を診る」という本質に迫るものです。
著者の幾嶋氏は、西洋医学の医師としての確かなキャリアを持ちながら、漢方、さらには手相へとその探求の幅を広げられた異色の存在です。当初は患者との会話のきっかけに過ぎなかった手相の観察が、やがて漢方治療に活かせる確かな知見をもたらすことを発見し、本格的に研究に取り組まれたという経緯は、手相の可能性を信じる私たち手相家にとって大きな励みとなります。例えば、不安が原因で生じる腰痛に対し、手相からその精神状態を読み解き、適切な漢方薬を処方することで症状が改善されたという具体的な事例は、手相が持つ「観相学」としての実用性を鮮やかに示しています。
本書の中心にあるのは、漢方における「病気ではなく人間を診る」という基本的な思想です。幾嶋氏は、この全体的な視点に「気・血・水」や「五行」といった漢方特有の概念に加え、手相を統合することで、患者の精神状態をより詳細に分析し、個々に適した治療法を見出すことができると説きます。手のひらに刻まれた線や盛り上がり、さらにはその状態を読み解くことで、その人が抱える疾患や症状の根源にある心の問題を浮き彫りにできるというのです。
特に興味深いのは、漢方における**「七情」**、すなわち「怒」「喜」「思」「悲」「憂」「恐」「驚」という七つの感情と、それらが内臓に及ぼす影響についての解説です。例えば、過剰な怒りが肝臓を害し、深く悲しむことが肺を損なうといった、感情と身体の密接なつながりが詳細に述べられています。手相を通じてその人の感情傾向を読み取ることができれば、これらの知識と組み合わせることで、心身のバランスの崩れを早期に察知し、未病のうちに対処したり、既存の症状の根本原因を探る手助けになるでしょう。
手相の読み方についても、実践的な指針が示されています。幾嶋氏は、より多くの情報を得るために両手を見ることを基本としています。一般的に利き手でない左手が生まれ持った潜在的な資質を、利き手である右手が現在の状態や未来の傾向を示すという解釈は、多くの手相家にも共通する見方ですが、本書ではそれを「潜在意識」と「顕在意識」との関連でさらに深く掘り下げています。また、手相鑑定の際に「生命線が際立って太い」や「感情線が長い」といった、他の人とは異なる**「特異的な部分」**を見つけることが、その人の本質や抱える問題を理解する鍵となるという指摘は、鑑定眼を磨く上で非常に示唆に富んでいます。
具体的な手相の線や丘の解釈も、心身の状態との関連で語られており、手相家の知識を一層深めます。例えば、感情線の解釈では、その線の濃淡、途切れ、鎖状になっているか、あるいは枝分かれの仕方によって、繊細さ、感情のコントロールの度合い、人間関係での傾向、愛情表現のスタイル、さらには鬱病の兆候までが示唆されます。感情線に「島」がある場合は、恋愛トラブルや目の疲れに注意が必要であるといった具体的なアドバイスも、実践で役立つでしょう。また、生命線のカーブの大きさや、途切れ方、鎖状の生命線が示す体力や健康状態、さらには病気の部位に関する記述 は、手相が持つ診断的な側面を強く感じさせます。知能線の長さや始点、伸びる方向が示す思考パターンや適性、そしてストレスや精神的な問題との関連 についても詳細な言及があり、これらは手相を通じてその人の内面を深く理解するための重要な手がかりとなります。
本書で特に強調されているのが、手相の歴史と科学性に関する部分です。手相が古代インドで誕生し、西洋と東洋へと伝播していく歴史が紹介され、特に中国から日本に伝わった東洋手相が、単なる運命判断だけでなく、病気の診断手段としても用いられてきた実用的な側面が語られている点は、手相家にとって自身の専門分野の価値を再認識させてくれるでしょう。さらに、中国の王晨霞医師が15万件ものカルテを分析し、手相による病名診断の診断率が非常に高いことを実証したという事実は、手相が持つ潜在的な医療的価値を裏付ける、非常に力強い証拠として胸に響きました。
この一冊は、手相を単なる「未来予知のツール」として捉えるのではなく、「現在進行形の心身の声を読み解く診断ツール」としての可能性を提示しています。まるで、手のひらが私たち自身の**「生きたカルテ」**であるかのように、その深い意味を教えてくれます。手相家としては、この本を通じて、鑑定の質を一層高め、相談者の抱える問題に対してより包括的で実用的な示唆を与えられるようになるでしょう。手相と漢方の融合は、私たち自身の内なる宇宙をより深く理解し、健やかに生きるための新たな扉を開く、画期的なアプローチであると断言できます。
Amazon | 単行本 | Kindle |
Audible | 新着タイトル | |
Kindle | 新着タイトル |