『手相人相の見方』小林三剛

小林三剛『手相人相の見方』

「あの人は感じが良い」と直感で判断しても、「あんな人とは思わなかった」と後悔する——。複雑な人間関係の中で、私たちはしばしば外見に惑わされ、本質を見誤ってしまいます。易学の大家・加藤大岳師に師事した小林三剛氏による『手相人相の見方』は、そんな人間の「見かけ」の不確かさに、科学的な視点と長年の経験に基づいた「相学」という確かなメスを入れる一冊です。本書は、運命を占うだけでなく、自分自身と他者を深く理解し、より良い人生を築くための「生活の知恵」を与えてくれます。

なぜ相学は、現代的な「科学」なのか

本書はまず、運命学の中でも手相・人相といった「相学」が、神秘的な占いとは一線を画す、**「最も現代的な科学的考え方に合った運命学」**であると位置づけます。なぜなら、それは数千年にわたる判断の積み重ねと、人間の生理学という具体的な基礎の上に成り立っているからです。

私たちの肉体に現れる形（相）を手がかりに、まだ見ぬ運命の傾向や、隠された性格の秘密を明らかにする。それは、単なる当て推量ではなく、経験則に基づいた合理的な分析なのです。本書は、そのための正しい知識を、初心者にも理解できるよう平易に解説し、複雑な現代社会を生き抜くための「処世術」として活用することを提案します。

運命は変えられる！ 「宿命」を知り、「努力」で拓く

本書が読者にもたらす、最も重要で希望に満ちたメッセージ。それは、**「運命は先天的な宿命と後天的な努力との二つによって成り立っている」**という真実です。

多くの人が「運命＝変えられない宿命」と考えがちですが、著者はそれを明確に否定します。相学によって自らの先天的な傾向（宿命）を知ること。それこそが、後天的な努力によって運命をより良い方向へと変えていくための、第一歩なのです。

• 家庭運が悪いと知れば → 計画的に家庭を設計し、改善を図る。
• 財運が乏しいと悟れば → 浪費癖を自覚し、収支を管理する。

鑑定の結果、自分というものを改めて知り、反省し、自らの運命を開拓した人は少なくない、と著者は語ります。これこそが、相学を「生活の知恵」として活かす、真の価値なのです。

鑑定の鉄則 – 全体を見て、慎重に判断する

本書はまた、鑑定における重要な注意点を強調します。「一ヵ所だけを見て結論を出してはいけない」。必ず他の箇所も併せて観察し、最低でも三点が一致して初めて判断を下す、という慎重な姿勢を求めます。

この総合的な視点こそが、正確な自己理解、他者理解へと繋がるのです。

『手相人相の見方』は、単なる未来予測の本ではありません。それは、科学的な視点に基づき、自分自身と深く向き合い、より良い人生を自らの手で切り拓くための、信頼できる「座右の書」となるでしょう。