『運命をひらく手相術』大和田斉眼

大和田斉眼『運命をひらく手相術』

人の顔は本心を隠し、美しい言葉は惑わす。しかし「手」は表情もなければ、偽りの言葉も語らない。ありのままの性質と運命を、無言のうちに、しかし克明に映し出している——。大和田斉眼氏による『運命をひらく手相術』は、この揺るぎない事実を原点とし、手相が持つ「真相」を正確に読み解くための、揺るぎない基礎知識を我々に授けてくれる本格的な一冊である。

左右の手が織りなす、人生の物語

本書がまず、旧来の俗信を退けて提示するのは、近代手相学の根幹をなす「左右両手比較」の重要性である。

• 左手は「先天性」：生まれ持った資質、幼少期の環境、そして精神的なものを示す。
• 右手は「後天性」：自らの力で築き上げる、物質的な発展や社会的な運命を示す。

この原則に基づけば、手相は単なる一点の吉凶を示すものではなく、生まれ持った才能（左手）を、その人が人生でどう活かしてきたか（右手）という、壮大な物語として読み解くことができるようになる。例えば、左手が良く右手が悪い人は、恵まれた素質を活かしきれていない可能性を示し、逆に右手が良い人は、自らの力で運命を切り拓く力強さを持っていると解釈する。この左右の対話こそが、深みのある人間理解を可能にするのだ。

見過ごされがちな大原則：「男性的な手相」と「女性的な手相」

さらに著者は、多くの手相術が見過ごしがちな、しかし極めて重要な大原則を説く。それは、**「男にとっての吉相が、そのまま女にとっての吉相にはならない」**という、「男女の相」の違いである。

例えば、中指に向かって真っ直ぐ伸びる力強い立線（天下筋）は、男性にとっては「天下を取る」ほどの強運を示す大吉相だ。しかし、同じ相が女性の手にあれば、それは夫運に恵まれず、自らが一家を支えなければならないという、苦労の運命を暗示することがある。

女性らしい手、男性らしい手というものが存在し、その人の性別にふさわしい相を持っているかどうかが、その人の性格や夫婦運を判断する上での大前提となる。この深遠な知識なくして、正確な鑑定はありえないと著者は断言する。

運命をひらくための「基礎知識」

『運命をひらく手相術』は、手軽な占いのテクニックを求める読者ではなく、手相という学問の「基礎」を固め、本質を理解したいと願う、真摯な探求者のための書である。

複雑に入り組んだ線の意味に惑わされる前に、まず知っておくべきことがある。左右の手の意味、そして男女の相の違い。この二大原則をしっかりと頭に入れることこそが、自らの、そして他者の運命を正確に、そして深く読み解き、より良い未来へと「ひらく」ための、最も確実な第一歩となるだろう。