銭天牛『手相入門』
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「手相の本を読んだけれど、結局自分の手はわからなかった」。この、手相学習者が一度は抱くであろう切実な悩みに、著者自身の苦い体験をもって真正面から応える一冊が、銭天牛氏の『手相入門』である。本書は、師も弟子も持たない「アマチュア」を自称する著者が、机上の空論ではない、生きた「実占経験」から導き出した、極めて実践的な手相術の指南書である。
孤独な青年を救った「わずかな知識」
本書の説得力は、著者自身のユニークな半生に裏打ちされている。かつては「ぶっきらぼうで、シンネリムッツリ」な、つき合いにくい人間だったという著者。そんな彼が周囲と打ち解けるきっかけとなったのが、他ならぬ手相の知識だった。仲間はずれにされていても、手相を見始めると自然と人の輪ができたという。
この原体験こそが、本書の根底に流れるテーマである。手相は、神秘的な予言の道具である前に、人と人とを繋ぎ、相手を理解するための強力なコミュニケーションツールなのだ。本書は、そのための「生きた技術」を、読者に惜しみなく伝授してくれる。
「アマチュア」だから書ける、独創的で大胆な解釈
著者は、二重頭脳線や変形マスカケといった特殊な手相の持ち主だったため、既存のどの本を読んでも自分の手を判断できなかったという。「本を読んでもわからない」という悩みを、誰よりも深く知る人物なのだ。
その苦悩を乗り越え、週刊誌のルポライターとして多くの人々と接する中で独学で築き上げたのが、本書で展開される「銭天牛流」の手相術である。特定の流派に属さない「アマチュア」だからこそ、先人の説に縛られることなく、大胆な仮説と独創的な解釈をズバリと書き記すことができた。その文章は、時に常識を覆し、読者に新たな発見と深い納得をもたらすだろう。
「卒業」を前提とした、真の入門書
本書の目的は明快だ。「読み終われば、あなたの手相も、人の手相も判断できるようになる」。そのために、理論のエッセンスと原理に重点を置き、ナマの手相を前にしたときに判断に困らないよう、徹底的に工夫が凝らされている。
しかし、著者は読者がこの一冊に留まることを望んでいない。「この本を入門書として早く卒業し、より深い研究に進まれることを望みます」と明確に述べている。これは、本書が手相の世界の広大さへの敬意を忘れず、読者を次のステージへと押し上げるための、誠実で力強い「踏み台」としての役割を自認していることの証左である。
もしあなたが、他の手相の本で挫折した経験があるのなら、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。孤独な探求者が自らの力で掴み取った「わかる」ための技術が、あなたの手のひらの謎を解き明かす、最高の鍵となるはずだ。
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