『指紋と性格運命』長谷川滔浦

長谷川滔浦『指紋と性格運命』

木の年輪がその樹齢や質を語るように、人の指先に刻まれた紋様は、その人の生まれ持った性格と運命を驚くほど的確に示している——。長谷川滔浦氏による『指紋と性格運命』は、この揺るぎない事実に基づき、指紋を単なる「個人識別の符号」から、人生を航海するための「羅針盤」へと昇華させる、画期的な一冊である。犯罪捜査のイメージが強い指紋の世界に、人間福祉のための新たな光を当てる本書は、自己の根源を知りたいと願うすべての人にとって必読の書と言えるだろう。

犯罪捜査から「個性鑑識」へ

本書が提唱するのは、指紋法が持つ、まだ世に知られていない偉大な機能、すなわち「個性鑑識法」である。著者は、個人を識別する機能は指紋法の一側面に過ぎないと断言する。その真価は、生まれ持った個人の価値、すなわち性格、才能、そして運命の傾向を的確に鑑識し、人生をより良く生きるための指針を与えることにあるのだ。

この方法は、著者の師である奥澤彌三郎氏が大成した新しい科学的メソッドであり、いたずらに不安を煽る占いとは一線を画す。不幸の原因、子供の教育方針、夫婦不和の根源、そして各自の適職に至るまで、指紋を研究することで、納得のいく答えと進むべき道を発見できると本書は力説する。

生涯変わらぬ「魂の刻印」が示すもの

手相の線が生き方によって変化するのに対し、指紋は生まれたときから生涯変わることがない。この「不変性」こそが、指紋から読み解く性格と運命の、絶対的な信頼性の源泉である。

私たちは、自分自身の性格や運命に盲目であるために、多くの不幸や失敗を経験する。しかし、もし指紋によって「自己の性格と運命を自覚」し、性格上の欠点を補い、運命上の難関を乗り越える方策を講じるならば、不運を幸運に転じることも決して難しくはない。本書は、そのための最も簡易で的確な方法として、指先の紋様を読み解く術を平易に解説してくれる。

自己を知り、他者を導くために

『指紋と性格運命』は、単なる自己分析の書ではない。悲運に嘆く人に光明を与え、迷える人に自覚を促し、逆境にある人に開運の鍵を握らせる——。他者のためにその知識を活用することの重要性を、本書は繰り返し説いている。

著者が、師である奥澤氏の代理として、その研究の大略を世に紹介するために筆を執ったという本書には、門前の小僧として学び始めた著者の謙虚さと、この学問への深い敬意が満ちている。未熟な私の著である、と著者は謙遜するが、その内容は指紋という深遠な世界への、最も信頼できる入り口となっている。

自分という存在の根源を知り、生涯変わることのない自己の設計図を手にしたいと願うなら、この一冊はあなたの人生にとって、かけがえのない導き手となるに違いない。